Chapter 6. Sendmail

Sendmailの紹介

 Sendmailはインターネット上で使用される非常にポピュラーなメール転送エージェント (MTA) で、1つのホストからその他のホストに対して特定ポイントでのインターネット経由の電子メールの大半を処理しています。 ほかにもメール転送エージェントはあり、Red Hat Linuxとうまく併用できるのですが、ほとんどの管理者は、そのパワー、スケーラビリティ、インターネット標準との適合性の面で、MTAとしてSendmail を使用しています。

 ほかのMTAと同様に、Sendmailの中心となる役割はホスト間で安全に電子メールを送受信することであり、通常はSimpleMailTransfer Protocol(SMTP)を使用します。 ただし、Sendmail は高度な設定が可能で、電子メールの処理方法のほぼすべての制御が可能です。

 Sendmailのルーツをたどると電子メールの誕生の時期にまでさかのぼります。それはインターネットの先駆者であるARPANET が誕生する前の10 年の間に開発されました。 当時のメールボックスは、読み取りのみが可能なファイルで、メールアプリケーションはそのファイルにテキストを追加しただけのものでした。 メールファイルの中から古いメールを見つけ出すのは大変な作業で、新しいメールを読むのはおっくうなことでした。 あるホストから別のホストにメールメッセージのファイルを最初に転送したのは1972年になってからのことで、その時期から電子メールは、 FTP によって NCP ネットワークプロトコルで送信されるようになりました。 この簡単な通信方法はすぐに普及し、1 年以内で ARPANET の通信量にほぼ接近するところまで到達しました。 しかし、競合するプロトコルとの間の標準化がなされなかったため、システムによっては電子メール送信がより困難になってしまい、その状態は1982 年にARPANET がTCP/IP を標準化するまで続きました。 新しいプロトコル、SMTP によってメッセージ送信が実現しました。 この一連の開発と、 HOSTS ファイルが DNS に置き換わったことによって、フル機能を備えたMTA が実現しました。 Delivermailというそれ以前の電子メール送信システムを発展させたSendmailは、インターネットが普及し広範囲で使用されるようになるにつれて業界標準となりました。

 Sendmailとはどういうもので、何ができて、何ができないかを認識しておくことは重要なことです。今日のように、モノリシックアプリケーションが複数の役割を果たす時代においては、Sendmailが組織内で電子メールサーバーを起動する唯一のアプリケーションです。Sendmail はメールをユーザーのディレクトリにスプールでき、コマンドラインで新しい電子メールを受信することが可能です。しかし、 現在ユーザーが実際に求めているのは単なる電子メール配信よりずっと高度な機能です。 ほとんどのユ−ザーは通常、Post Office Protocol(POP)、 Internet Message Access Protocol(IMAP)、さらには Web を利用したメールユーザーエージェント (MUA)を使った電子メールのやりとりを望んでいます。これらのその他のプロトコルは、Sendmail や SMTP と併用できますが、実際にはその存在理由はそれぞれ異なり、個別に動作可能です。

 Sendmail をどのように設定するか、またはどのように設定できるかについてはこの章では説明しません。Sendmail を各ユーザーの仕様に合わせるための情報については、オンラインおよびオフラインで提供されている優良なソースを参照してください。ただし、Sendmail にはデフォルトでどのようなファイルがインストールされているのか、また基本設定の変更方法、不要な電子メール(spam) がSendmail経由で配信されないようにする方法、Lightweight Directory Access Protocol(LDAP) によってSendmailの機能を拡張する方法を理解する必要があります。